「トリックオアトリート！」

　その日、仮装をした少年の声が屋敷の其処彼処から聞こえた。

ティッシュってこういうことありますよね。

□現在起こっている現場の異常に関する報告

　現在、現場に於いて原因不明な異常が複数確認されている件について報告します。
　今後職務に支障を来す可能性も考えられるため、早急に調査並びに対応戴けます様お願い申し上げます。


[確認されている異常]

　・女性社員が持ち寄った菓子類や、接客用の茶菓子が何時の間にか荒らされている。
　　―本日までに七回の被害を確認、監視カメラに異常無し。

　・社員数名が金属の擦れる様な音がすると証言。
　・夜間警備員が歌声の様な音を聴いたと証言。
　　―何れも監視カメラ等の音声には異常無し。

　・視線の様なものを感じると訴える社員が複数名。
　　―人数は日を追う毎に増えている模様。

　・社員の無断欠勤。
　　―何れも金属の擦れる音がする、視線を感じると訴えた社員。
　　―無断欠勤の二日程前から精神的に不安定な様子有。


　現在確認されている異常は上記の通りです。
　此方でも原因の確認を行っていますが、






　人が居る。
　恐らく現在確認されている異常に関係のある人物と考えられるため、一旦此処に様子を書き留める事とする。

「嗚呼、嗚呼、可哀想に。」

　囁く様な、けれども妙にはっきりと聞き取れる声は、確かに目の前の男――声から察するに恐らく男だろう――から発せられている筈なのに、まるで耳元で話されているかの様な錯覚を覚える。一体何時から其処に居たのか。問おうと口を開くものの、上手く言葉が出て来ない。
　生憎薄暗いため細かい容姿は解らない、蛍光灯を換えてもつかないため、線か接続に問題があるのだろう。業者に連絡するため予算として落として戴きたい。

「ねぇ、何をしているのですか。
　皆さん毎日忙しそうに此の機械を扱っていらっしゃいますが。」

　私に近付き、端末を黒いマニキュアをした手がなぞる。細い、けれども骨張った指は確かに男のものだ。もう片方の手には接客用に新しく買った芋羊羹を持っている所を見ると、少なくとも菓子類を荒らしていた犯人は此の男と考えて良いだろう。
　愁いを帯びた瞳が、私が今此れを入力している画面を、今正に顔を近付けて眺めている、入力されている文字を灰色の双眸が追っている、画面の光で不健康そうな蒼白い肌が照らされる、整った顔立ちだが生気が感じられない、まるで人形の様だ。
　答えたいのに声が出ない。手は動くのに。
　此方を見た。

「……ねぇ、僕の事を綴っているのですか。」

　そうだ。

「お菓子を勝手に戴いてしまった事を怒っていらっしゃるのですか。」

　私個人は怒っていないが問題にはなっている。

「其れは申し訳無い事をしました、甘い物が無いと辛いのです。」

　あぁ、目が合ってしまった、灰色の輝きの無い瞳と、瞳孔が針の様に細くなっている瞳と。死人の様だとも感じたが死人は瞳孔が開くらしいからだとすると此の男は矢張り人形の方が近そうだ。
耳鳴りがする。いや此れは端末のモーター音か然し其れにしてはざらついた金属の様な鎖ですかそう鎖だ鎖の音がするもしかして社員達が聞いたのは此の音かえぇ恐らくそうでしょうね此れは僕のです君の名は何と云うのか是非名前を聞きたい如何してそんなに淋しそうに此方を見るのかいや抑々表情が全く無いから本当に淋しいのかは私には解らないけれど如何した何処へ行く待ってもう少し話をおｋｗっわｆｋｊｇｊｓｓｈ；あｊ」えぽｐLkfn















可哀想に。